2025年度大学入学共通テスト「地理総合・地理探究」 2025年1月18日実施   TOPへ

 2025年度から新学習指導要領の大学入学共通テストに変わり、地理の受験科目は「地理総合・地理探究」になりました。受験生も、教員も不安な中での共通テストを迎えることになりました。1回目の「地理総合・地理探究」はどんな問題だったでしょうか。予備校などが作成した直前演習問題は、かなり難しく、悪戦苦闘した生徒も多かったと思います。1回目だったこともあり、知識や考え方を落ち着いて組み合わせれば、思ったほど難しくなかったのではないでしょうか。

2年生のみなさんは、来年に向けて、教科書や資料集、地図帳で確認してください。

特に、地図帳の「気候」や「世界の大地形」のページは、1分でもいいので、毎日見てほしいと思います。

また、日頃からテレビ、新聞などで、世界の国々の現況に興味をもってください。

とりあえず、問題を解いてみて、ポイント、感想をアップしました。

間違いがありましたら、メールで教えてください。

共通テストの問題と解答は、こちらを参考にしてください。

過去の共通テスト・センター試験「地理B」分析は、こちら

第1問(食料の生産や消費)

問1 食や健康に関する統計地図の読図

  日本や乾燥地域の中東、北アフリカが高位、中位になっているので、2の「穀物の輸入依存度」になる。

問2 自然環境と農業

 1(正)アはDf気候に位置し、チェルノーゼムが分布する小麦地帯である。

 2(誤)イはアブラヤシではなく、ナツメヤシが正しい。

 3(誤)ウは赤道上に位置するので、「雨季や乾季が明瞭」が誤り。

 4(誤)エはCs気候に位置するので、「冬より夏の降水量が多い」ではなく、「夏より冬の降水量が多い」が正しい。

問3 コーヒーと茶の消費

  受験生が利用している「データブック オブ・ザ・ワールド」や全日本コーヒー協会のデータと、FAOSTATのデータが違うので戸惑いますが、1人1日当たりのコーヒーの消費量が最も多い4が、エスプレッソ発祥のイタリア。イタリア、日本の次にコーヒーの消費量が多く、茶(紅茶)の1人1日当たりの多い1がイギリス。「データブック オブ・ザ・ワールド2025」では、1人当たりの消費量がイギリス(1.50kg)より中国(1.86)のほうが多くなっています。コーヒーで判断しなければなりません。残りの3がインドネシアになります。インドネシアのコーヒー消費量は、ICO統計ではイギリスやイタリアより多くなっています。人口で割っても、図3のようにはなりません。これまでのように、「世界国勢図会」や「データブック オブ・ザ・ワールド」から資料が作成されていませんので、受験生にとっては難しいかもしれません。このことが、「地理総合・地理探究」の出題特徴かもしれませんね。

問4 食品ロス

  2(誤) 南アジア、東南アジアの発展途上国における食品ロスの問題は、適切な食品保存や輸送技術の不足、農産物の収穫後の取り扱いなどが挙げられます。

第2問(地域調査)

問1 新旧地形図読図

  地形図や地理院地図の標高を読み取れば、cの「国道1号線は下り坂」ではなく「上り坂」であることが分かります。

問2 製造業の立地

  メッシュデータを落ち着いて読み取れば、1、2が正しいことは分かります。3も間違いではないでしょう。4は、写真から 三河湾臨海地区は臨海立地なので、道路の利便性よりも、海上輸送の利便性が大きな要因だと考えられます。西浦、蒲郡、豊橋及び田原の4港を統合した三河港は、輸出額では9位(2022年)です。

問3 農作物の変化

  大消費地へのアクセスの向上や豊川用水の開通によって、温暖な渥美半島は野菜や花卉の栽培が盛んです。渥美半島の田原市は、市町村別農業産出額(2022年)が全国第2位です。「ウ」がキャベツになります。2006年に収穫量がほとんどない「イ」がさつまいもで、減少している「ア」が米になります。

問4 交通による結びつき

  大阪で判断しましょう。新幹線で移動するでしょうから、人数の多い「カ」が鉄道になります。静岡県も長野県も隣県ですが、アクセスを考えると静岡県との移動が多いと思われますので、人数の多いK県が静岡県になります。

第3問(世界の自然環境と自然災害)

問1 植生の分布

  植生指数とは、植物による光の反射の特徴を生かし衛星データを使って簡易な計算式で植生の状況を把握することを目的として考案された指数で、植物の量や活力を表しています。正規化植生指数(NDVI:Normalized Difference Vegetation Index)が、代表的な植生指数です。目視できない以上を可視化することができます。問題文の註に「植物による光合成の活発度を示す」とあるので、正規化植生指数が低いほど植生が乏しいので、乾燥地域や高山などの砂地や裸地が多い地域と考えましょう。1は始点のみ指数が低いので、アンデス山脈があるD。2は後半部が指数が低いので、ガンジスデルタとヒマラヤ山脈・チベット高原、タクラマカン砂漠が位置するB。3は徐々に指数が低くなり、後半は指数が低い状態が続くので、ギニア湾岸、サヘル、サハラ砂漠が位置するA(正解)。終点が最も指数が高い4が、東岸が温帯になるC。

問2 地形

  Fは安定陸塊が侵食され硬い岩盤が残った説明なので、図の中央部以外は平坦な「ア」。「イ」は火口が見られるので、Hになります。「ウ」は尾根と谷が見られるので、Gになります。ナミビアの最高峰はブランバーグ山(2606m)で、アフリカーンス語で「炎の山」という意味です。ネパールの最高峰はサガルマータ(エベレスト山,8848m)、フィリピンの最高峰はアポ山(2954m)です。

問3 エルニーニョ現象とラニーニャ現象

  エルニーニョ現象は、ペルー沖の海水温が平年より高くなる現象なので、図はKになります。南アメリカ大陸西岸は、赤道(北)に向かってペルー海流(寒流)が流れている。

問4 被害者数と被害額

  被害額は、発展途上国より先進国のほうが大きくなるので、「シ」が総被害額になり、「サ」が被害者数になります。Pは日本と同じ先進国のアメリカに、Rは被害者数が多い割には総被害額が最も少ないので後発開発途上国のバングラデシュになります。残りのQが、タイになります。

問5 地球温暖化と海陸の割合

  海氷は海水面に比べ太陽光の反射率が大きいため、海氷が拡がっていると、地球が太陽のエネルギーを吸収して昇温する割合が小さくなります。また、海水温は凍らない限り-2度以下にはなりませんが、海氷が海面を覆うと海水から大気への熱輸送が遮断されます。この二つの特徴から、気温が上がり海氷が融解すると、太陽熱の吸収率が上がり、海水から大気への熱輸送も増加して、ますます気温が上昇するというフィードバック効果が生まれます。つまり、海氷はわずかな気温変化に対しても大きく変動する高感度なセンサーといえます(気象庁)。

  「チ」と「Y」に該当する図のみがグラフのパターンが違います。このグラフは、上昇気温が他のグラフより高くなっているので、海洋の割合が大きく、海氷が融けて上昇気温が大きくなる北半球の80~90度と考えられます。「チ」が北半球で「タ」が南半球になり、「Y」が80~90度で「X」が30~40度になります。

問6 GISの活用

  GISの基本的な活用例です。「津波浸水想定区域」と「人口分布」のデータを重ねる(マ)ことによって、「津波浸水想定区域」の人口を計算することができます(a)。「津波浸水想定区域」の人口分布データと「避難場所からの特定距離圏」を重ねる(ミ)ことによって、避難場所別の避難者数を計算することができます(c)。「避難場所からの特定距離圏」から外れた「人口分布」データ(ム)は、「避難が間に合わない可能性のある人数」(b)になります。図7の「避難場所からの特定距離圏」は円になっていますが、実際には道路を移動するので、等距円は正しくありません。GISでは、道路に沿ったネットワーク解析を行うことができます。

第4問(エネルギーと産業)

問1 発電方式別の発電量の増加率

  「ア」は、すべての発電方式において大きく発電量が増加しているので、中国になります。「イ」は原子力が最も大きく減少し、火力が増加しているので、日本になります。2010~2019年の増加率というところがポイントで、2011年に東日本大震災があった日本は原子力による発電量が大きく減少し、それを補うために火力による発電量が増加しました。太陽光・地熱・風力以外の発電量が減少している「ウ」は、ドイツです。

問2 ウェーバーの工業立地論

  醤油製造は、大豆、小麦、塩などを集めて製造されるので、消費地に近いところに立地します(C)。かつては、街の中に小さな醤油工場がたくさんありました。石油精製は、原料と製品の重量が大きく変わらないので、原料産地と消費地の両方に立地します(B)。中東の産油国にも、原油の消費国にも石油精製の工場があります。ワイン製造は、北海道や山梨県のブドウ産地にワイナリーがあります(A)。

問3 産業立地

  卸売販売額は各地方の中心都市で多くなるので、東京都、愛知県、大阪府などで割合が大きい「キ」が該当します。小売販売額は人口規模に比例するので、「ク」が該当する。残りの「カ」が、製造品出荷額になります。

問4 国際観光収支

  2019年なのでコロナ禍前の国際観光支です。日本、スペイン、タイ、ドイツの4か国の中で、最も観光客が訪れる国がスペインですので、国際観光収入の最も多い1がスペインになります。ヨーロッパではバカンスが一般的で、ヨーロッパの国々から地中海沿岸のリゾート地に長期滞在型の観光が行われています。国際観光支出の最も多い2がドイツになります。2010年から2019年にインバウンドで国際観光収入が大きく増加した3、4が日本とタイのどちらかで、支出の多い4のほうが日本になります。

問5 国際分業

  ファブリス企業とは、自社で工場を持たず製品の企画・設計を行い、製造を外部に委託する企業のことです。多くの企業は、労働費や土地が安価な東南アジアなどの海外の工場に製造を委託するので、4の「部品製造の工場と製品の消費地が近接する」は誤りです。

問6 貿易収支

  日本においてJは、中間財、最終財とも正の値(貿易黒字)なので、輸送機械になる。日本において家庭用電気機械(K)は、部品(中間財)、製品(最終財)とも海外生産なので、貿易赤字(負の値)になっている。輸送機械(J)、家庭用電気機械(K)とも貿易赤字になっている「シ」がアメリカになる。中国(サ)は自動車部品(中間財)を輸出し、自動車(最終財)を輸入している。

第5問(都市と産業)

問1 工業用地の移り変わり

  1965~1975年(ア)の高度経済成長期は、各産業の基礎素材となる鉄、石油、木材、紙などの製品を製造している製造業(基礎素材型産業)が、臨海部に立地(k)しましたが、石油危機後の1975~1995年(イ)は、一般機械器具、電気機械器具、輸送用機械器具、精密機械器具などの加工組立型産業の技術革新が進展し、労働費や土地が安価な地方圏に立地しました(j)。1975年以降、工業用地の面積が増加しているBが地方圏で、減少しているAが三大都市圏になります。

問2 産業構造の変化と人口構成

  20代で人口の移出、移入が見られる「キ」が1990年で、都心から40km離れたyは20代で進学や就職でニュータウンから出ていくので、Eがyになります。2015年「カ」をみると、yでは高齢社会を示す人口ピラミッドになり、再開発が行われたxでは生産年齢人口の割合が大きくなっています。

問3 産業構造の変化と都市人口率の推移

  都市人口率が大きく変化した「サ」は、アジアNIEsの韓国です。オーストラリアは、鉱業や農業が産業の中心で、製造業は主要産業になっていません。オーストラリアの輸出品目からもわかります。GDPに占める製造業の割合が小さい「ス」が、オーストラリアになります。残りの「シ」がイタリア。

問4 情報関連産業

  「全国の従業者数の増減率」がマイナスになっている「タ」と「ツ」が、出版業、新聞業のどちらかで、「全国の従業者数に占める東京の割合」が大きいほうが出版業になります。出版社の多くが東京にあり、新聞社が全国にあることから判断できます。「全国の従業者数の増減率」がプラスの「チ」がソフトウェア業になります。

問5 ロンドンの都市問題

  階級区分図の重ね合わせの問題で、落ち着いて見比べれば解答できます。失業率の高い地域は、外国で生まれた人の割合が大きい地域とほぼ一致しているので、「失業率は、シティを中心に同心円状に高位から低位へと分布する」の3が誤りです。

第5問(インド洋をとりまく地域)

問1 サイクロン

  図1に赤道を引きましょう。サイクロンなどの熱帯低気圧は赤道上では発生しません。赤道に近い「エ」が、サイクロンの上陸頻度が最も低い地域になります。

問2 稲作

  A~Dのすべての地域で稲作が行われています。問題は「灌漑施設を用いない稲作」ですので、Aが正解となります。パキスタンは乾燥地帯、半乾燥地帯が多く、貫流するインダス川を中心に世界最大の灌漑システムを備えているといわれています。ところが、川辺の用水路網や運河の建設で天然の氾濫原や湿地帯を破壊され、降水の保持能力が低下し、大規模な洪水に発展しやすくなったという問題も起こっています。Dのマダガスカルは、マレー・ポリネシア系の住民が多く、稲作が盛んに行われています。

問3 人とモノの移動

  「データブック オブ・ザ・ワールド2025」では、アラブ首長国の民族構成は、アラブ人48%、南アジア系36%となっています。多くのインド系の人々が、建設現場などで働いていると考えられます。よって輸出額も多い「カ」が、アラブ首長国になります。イギリス植民地時代から、インド系の人々はシンガポールにも移住しているので、「キ」がシンガポールになります。

問4 民族と宗教

  Fのタンザニアは、ムスリム商人の活動によってアフリカ東海岸の現地語とアラビア語が融合して生まれたスワヒリ語と旧宗主国の影響で英語を公用語としている。旧宗主国のイギリスの影響でキリスト教を信仰する人も多い(ス)。Gのインドに栄えたムガル帝国は、イスラム王朝です。インドではヒンドゥー教徒が80%、イスラム教徒が14%となっています(「データブック オブ・ザ・ワールド2025」)(サ)。Hのミャンマーは、軍事政権後、イスラム教徒のロヒンギャを弾圧しています(シ)

問5 インド洋の島嶼国

  モーリシャスは、イギリスから独立したので、2が誤り。

 

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