2022年度大学入学共通テスト「地理B」 2022年1月15日実施 TOPへ
2021年度から大学入学共通テストに変わりました。複数の資料を読み解く問題が多くなり、地理的知識だけでなく読解力が必要となり、問題を解くのに時間を要し、昨年より難化したと思います。私も60分かかりました。
2年生のみなさんは、来年に向けて、教科書や資料集、地図帳で確認してください。
特に、地図帳の「気候」や「世界の大地形」のページは、1分でもいいので、毎日見てほしいと思います。
また、日頃からテレビ、新聞などで、世界の国々の現況に興味をもってください。
とりあえず、問題を解いてみて、ポイント、感想をアップしました。
間違いがありましたら、メールで教えてください。
共通テストの問題と解答は、こちらを参考にしてください。
過去のセンター試験「地理B」分析は、こちら
第1問(世界の自然環境・自然災害)
問1 大陸棚の分布
大陸棚の分布の問題ですが、図1の海溝の位置を理解していれば解答することができる。
図1
問2 河川の特徴
図2から分かるように、500m以上の標高がある「カ」が、「B」のポー川になる。
「B」のポー川の河口は、三角州なので、「y」が該当する。
日ごろから、地図帳をみましょう。
地理院地図より作成。
図2
問3 河川流域の植生
裸地の割合が最も大きい「4」が「E」のインダス川。
次に裸地の割合が大きい「3」が「F」の黄河。
常緑広葉樹の割合が最も大きい「1」が「H」のメコン川。
残りの「G」が長江となる。
気候区分と関連させて考えよう。
問4 オーストラリアの気温と降水量
オーストラリは南半球なので、1月が夏、7月が冬であることに注意。
「4」の図がヒントとなる。
オーストラリアの北部は、Aw気候なので、7月の冬季は乾季となる。
オーストラリアのほとんどが(ー)となる「4」が、7月の降水量となり、
「Q」が降水量、「P」が気温、「サ」が1月、「シ」が7月となる。
よって、1月の気温は「1」になる。
問5 アフリカの自然災害
熱帯低気圧による自然災害の発生数が多い「チ」が、インド洋に面した「東部」である。
地震が0の「ツ」が、新期造山帯やアフリカ大地溝帯に位置しない「西部」になる。
残りの「タ」が「北部」になる。
問6 日本の自然災害
△の雪崩による被害が分布する「ム」が「3~5月」、九州を中心に土砂災害が最も多く分布する「マ」が「6~8月」、残りの「ミ」が「9~11月」になる。
第2問(資源と産業)
問1 石炭と原油
中国は、石炭の生産量が世界全体の54.4%を占め、消費量も59.0%を占めともに世界最大である。中国、インド、インドネシア、オーストラリア、ロシアの5か国で石炭の生産量の84.5%を占めている。(2018年,『世界国勢図会2021/22』)
世界のエネルギー供給量は、石油が31.5%、石炭が26.9%、天然ガスが22.8%なっている(2018年)。原油の埋蔵量は、サウジアラビア、イラン、イラク、クウェート、アラブ首長国連邦の中東5か国で47.1%を占めている(2021年)。(『世界国勢図会2021/22』)
よって、説明文Aが石炭、説明文Bが石油になり、中東に集中する△(イ)が油田になる。
問2 1人当たり1次エネルギー消費量
人口の変化が少ない「キ」がヨーロッパ。
グラフからアジアにおける1人当たり1次エネルギー消費量は、あきらかに「増えている」。
問3 経済発展と環境に及ぼす影響
「サ」はヨーロッパの先進国についての説明なので、「1人当たりGDP」が増加し、「1人当たり二酸化炭素排出量」が減少している「c」になる。)
「シ」は原油産出国についての説明なので、「1人当たりGDP」と「1人当たり二酸化炭素排出量」が増加している「b」になる。)
「ス」は人口の多い新興国についての説明なので、1995年に「1人当たりGDP」と「1人当たり二酸化炭素排出量」が世界平均より小さい「a」になる。)
問4 化石燃料と再生可能エネルギーの発電量
ドイツよりカナダの方が、再生可能エネルギーの発電量、総発電量に占める割合とも大きいので、「ドイツが環境への負荷が最も小さい構成比である」は誤り。
問5 森林資源
木材の輸出額が最も多い「K」がロシアで、用途のほとんどを占める「チ」が用材となる。よって、「タ」が薪炭材。森林面積の減少率が大きい「L」と「M」が、エチオピア、ブラジルのいずれかで、「タ」の薪炭材がほとんどを占める「M」がエチオピアで、残りの「L」がブラジルになる。
問6 循環型社会
「2」は、マングローブ林を破壊して、エビの養殖池をつくるので、循環型社会に向けた持続可能な資源利用にはあたらない。
第3問(村落・都市と人口)
問1 伝統的村落(散村)の変容
空中写真から「2」の「あぜ道のほとんどが」舗装されては、あきらかに適当でない。
問2 年齢別人口割合
人口の高位に位置し、ほとんどの市町村に1つ立地する△の「イ」が、500席以上の市民ホール。
人口の低位や市町村界近くに立地する■の「ウ」が、ごみ処理施設。
万遍なく立地している○の「ア」が、交番・駐在所。
問3 ジェントリフィケーション
「退廃した地区」は、「2000年の居住者の貧困率が40%以上」に該当し、「専門的職業従事者などの流入」は、「大学を卒業している居住者の増減が20%以上増加」に該当し、「経済的に豊かな人々の流入」は「賃料の増減が40%以上」に該当する。よって、すべてを満たすのは「4」となる。
問4 航空交通
中央・南アメリカからの旅客数が多い「ク」が、旧宗主国スペインのマドリード。フランスは、かつて西アフリカを植民地支配していたためアフリカとの関係が深い。よって「B」がアフリカになり、「キ」がフランスのパリとなる。よって、「A」が北アメリカ。残りの「カ」はドイツのフランクフルト。
問5 人口ピラミッドと人口の移動
年少人口が極端に少ない「D」が、「外国生まれ」の人口ピラミッド。途中から流入するからである。「E」の国内人口で、老年人口の比率が高い「シ」が、超高齢社会をむかえたドイツである。よって、「シンガポールの外国人生まれ」に該当するのは、「1」になる。
問6 出生率と死亡率の変化
出生率、死亡率ともに大きく下がっている「4」が後発発展途上国のバングラデシュ。バングラデシュの次に出生率が高い「3」が、マレーシア。変化の最も小さい「1」がカナダ。出生率が最も低い「2」が、韓国になる。
第4問(ラテンアメリカ)
問1 河川の流量
オリノコ川流域の地点Dは北半球で、雨季(夏季)は7・8月になるので、「ア」のグラフになる。サンフランシスコ川の地点Eは南半球で、雨季(夏季)は1・2月になるので、「イ」のグラフになる。グラフは、月別の比率であり、流量は分からない。オリノコ川の方が、赤道に近いところを流れているので、サンフランシスコ川より流量が多いと考える。よって、「b」は、「少ない」になる。
問2 エネルギー源別発電量の割合
ブラジルは、水力発電の割合が大きいので、「K」が水力になる。
どの国も、再生可能エネルギーの割合は小さいので、「L」が再生可能エネルギーになる。
残りの「J」が、火力になる。
ブラジルが、水力発電の割合が大きいことは、よく知られていますが、南米の他の国も水力発電の割合が多いのですね。
『データブック オブ・ザ・ワールド2022』で調べてみました。
ブラジル 水力63.5% 火力14.7% 風力8.9% 原子力2.6%
ベネズエラ 水力58.3% 火力41.6%
コロンビア 水力67.9% 火力29.9%
ペルー 水力58.3% 火力41.6%
パラグアイ 水力100%
問3 ブラジルの農産物の輸出入
ブラジルの輸出は、ファゼンダと呼ばれる大農園を背景にしたコーヒーなどの商品作物によって支えられてきた(1は正しい)。その後の新興工業国として経済発展するとともに、輸出額に占める農産物の割合は低下した(2は正しい)。ブラジルは、世界最大の農産物純輸出国である(3は正しい)。1971年と2019年を比較すると、コーヒー豆の割合は10分の1程度に減少するが、農産物の輸出額はあきらかに10倍以上になっているので、コーヒー豆の輸出額は減少していない(4は誤り)。
問4 所得の分配
「1人当たりGNI」が最も小さい「ク」が、経済発展がもっとも遅れているボリビアになる。「1人当たりGNI」が最も大きい「カ」が人口の少ないほうのアルゼンチン(人口4500万人)で、残りの「キ」がブラジル(人口2億1000万人)になる。所得分配の平等度は、ジニ係数で示すことができる。ジニ係数が大きくなるほど貧富の差が大きい。
※主な国のジニ係数 『世界国勢図会2021/22』
フィンランド 27.3(2018年)
日本 31.2(2017年)
フランス 32.4(2018年)
アメリカ 41.1(2018)
アルゼンチン 42.9(2019年)
コロンビア 51.3(2019年)
ブラジル 53.4(2019年)
南アフリカ 63.0(2014年)
問5 チリとニュージーランドの比較(自然条件)
新期造山帯に位置するチリとニュージーランドを比較する問題
1 寒流の影響を受けるのは、チリ。
2 年中湿潤な首都は、ニュージーランドのウェリントン。
チリのサンティアゴは、Cs(地中海性気候)で、夏は乾季となる。
→正解
3 ニュージーランドは南島に、チリは南部に、氷河地形や山岳氷河が見られる。
4 両国とも新期造山帯に位置するので、地震が頻発し、火山活動も見られる。
問6 チリとニュージーランドの比較(貿易)
鉱産物の割合が大きい「サ」が、チリ(銅鉱の生産量が世界1位)。
両国とも、1985年は「Y」の方が割合が大きく、2018年は「Ⅹ」の方が割合が大きい。
→ヨーロッパ(Y)から北アメリカ(Ⅹ)にシフト
第5問(苫小牧市とその周辺の地域調査)
問1 地理院地図の読図
慌てずに丁寧に地図を読むと、「3」があきらかに正しい。
問2 地形図、古地図の読図
小糸魚川の流路の変化は、時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」で見ることができるので、ぜひ見てください。
沿岸流(ア)によって運ばれる砂の堆積によって、直線的な砂浜が形成される。太平洋側は、冬季(イ)に降水量が少ないので、河川よりも沿岸流による運搬・堆積作用の方が大きく(ウ)なるので、川の流路が変わる。
問3 苫小牧港の立地と発展
250mメッシュ標高データをカシミール3Dで作成
上の地図から、苫小牧が人口の多い札幌市や空港のある千歳市と平坦な地形で結ばれていることが分かる。問題の図5から、「海外との輸出入」は、苫小牧港の取扱量は室蘭港より多くなっているが、割合は室蘭港より小さくなっている。「4」が、誤り。
問4 苫小牧の工業
苫小牧は、豊富な水と木材資源に恵まれ、明治時代から製紙産業が発達。1990年に苫小牧東部国家石油備蓄基地が完成し、石油の安定供給を図っている。1971年に比率が高い「A」が「パルプ・紙・紙加工品」になり、2018年に比率が高い「B」が「石油製品・石炭製品」になる。
問5 人口構成と住宅地区
50代以上の比率が低い「Ⅹ」が1995年で、若い家族が年齢を重ね50代以上の比率が高くなっている「Y」が2015年になる。地区dの社宅は、空き部屋があることから、単身者が中心で、子どもが多きくなった家族は、地区eに移ると考えられる。よって、地区dの人口ピラミッドは、「キ」になる。
問6 地域の課題
図から、人口が減少しているのは、「市役所の西側」(サ)である。温室効果ガス削減の観点から人口減少の解決は、自動車に頼る街の開発ではなく、「公共交通機関の利便性を高めること」(チ)が必要になってくる。